市民講座「市民生活に身近な法律問題」 (2021 年 2 月 6 日、13 日、 20 日、 27 日の各土曜日、13 : 30〜15 : 00 の計 4 回) が無事終了した。 受講登録者は 15 名で、 出席者数は毎回 13 名程度であり、 コロナ感染防止対策のもと、 レジュメと資料を配布し、 受講者と意見交換をしながら下記テーマについて理解を深めた。 いずれの回も受講者から熱心な質問等があった。
第1回 成年年齢引下げ―民法一部改正
成年年齢を満 18 歳に引き下げる改正民法は、 2022 年4 月 1 日から施行される。 高校3年生の多くは、 誕生日で満18歳となり、 成年者と未成年者が混在することとなる。 両者 (成年者と未成年者)は、 どちらも親権者の同意が不要な場合、 親権者の同意を必要とするケースで未成年者と成年者に分かれる場合、 どちらも 20 歳まで法律で禁止される場合の 3 つの場合に区分される。 高校生本人がこの区別を自覚していないと、 トラブルに巻き込まれたり、 又は自らもトラブルを引き起こしかねない。 法施行前に具体例でその改正内容と予防、 救済方法の周知が必要であることを説明した。
第2回 財産権の保障―空き家・所有者不明問題
憲法29条の財産権保障の歴史を確認し、財産権は抽象的であるので、具体的に所有権 (使用・収益・処分) を中心に意義と制限を説明した。 しかし、その所有権は強く保護されている権利であるが、 空き家問題が発生している現状とこれに対する対応策について説明した。 最後に、 改正が予定されている所有者不明土地問題について、 その実態とこれに対する対応策としての相続登記の義務化と過料制度導入の問題点について指摘した。
第3回 居住権の保護―被災地復興との関係
我が国の国土は限られていること等から賃貸住宅制度が発展している。 衣食住の「住」は人 の生存にとって不可欠であり、 賃借権が民法及び特別法で保護されてきた。 そこで、 民法の賃貸借、 特別法の借地借家法、 罹災法等の法制度を説明した。 さらに、 被災地における借地権・借家権がどのように保護されてきたのか、 改正された被災借地借家法が機能していない実態と被災者を遠ざける復興により、 被災地からの住民の流出を招いている実態を指摘した。 最後に、 南海トラフ巨大地震による津波被害への教訓として、 被災地に被災者をと入り込む復興の重要性に基づき、改正被災借地借家法の新たな改正を提案した。
第4回 配偶者居住権―相続法改正
遺産相続等を発端とする相続法改正の重要項目の 1 つである配偶者の居住権について、 判例等によって一定の範囲で保護されてきた配偶者の地位を保護するために、 改正を契機として明文化したものである。 配偶者居住権によりどのように保護されるかを、 被相続人の財産 (預金、住宅等) を具体的に示して、 新たな制度における配偶者居住権のメリット、 デメリット、 その法的性質と効力について説明した。