2017年度第1回年輪の会研修会の報告。

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2017年度第1回年輪の会研修会の報告。

7月2日(日)、荏原保健センター多目的室にて、
足利市立美術館学芸員 篠原誠司氏を迎えて、
「アートと精神障害~双極性障害を持つある美術家の生涯~」
というテーマで研修会が行われました。参加者14名。
 今回はアールブリュット(生のままの芸術、いわゆる障害者のアート)や
アートセラピーではなく、現代アートの立場から、2013年に亡くなったアーチストの
エピソードを、病の為に発表が叶わなかった作品の実物と資料を交えて、
話して頂きました。
 後半では、篠原氏が現在関わっているアールブリュットの紹介と共に、
質疑応答が行われ、アーチストにとっての作品を生み出す事と社会受容との関わりや、
福祉の立場から障害を持つアーチストの支え方、
そもそも芸術に障害の有無は問われるのか等、様々な意見が提示されました。

K.K氏(遺族の許可を得ず、
匿名)。1937-2013。
1960年美大絵画科卒。50年代後半から、各所で作品発表。
映画美術、服飾デザイン会社、
美大教員、また研究員として
西欧、アジア、中近東各所滞在。

95年、被害妄想により大学を
退職。
96年の個展初日に入院後、作品は発表出来なかったが、亡くなる
直前まで作り続けた。
写真は、96年、銀座での最後の
個展。

晩年の作品を実物で解説
(アラベスクシリーズ)。
生涯のテーマは海、旅。
布を画材に、アラビアのスカーフを使っている。

ある日、棺桶を買ってきた。
家族の反対により返却。
(その棺桶を使った作品、
見たかったなぁ)。
(でもそれ作っていたら破滅していたかも)。
(家族がいて良かった。
大変だったと思うけど・・)。

追悼展に集う人々。
ゆかりのある音楽家がライブ
演奏、大好きな音楽で送る。
(皆に愛されていたんだなぁ~)

これは篠原氏がちょっと
関わっているアールブリュット。
福島県猪苗代町の
「はじまりの美術館」。
沢山の文字で構成されている
作品。
(ことばの始まりを求めたら、アールブリュットに行き着いた)

障害を持つアーティストと
アールブリュットの違い。
他者との関わりに対しての意識の有無。
(自己の内面を)他人に見せる事を目的としているか。

(現代アートとは)、
自分にも見えない心の内を描く。
あるテーマを見出し、疑問を形にする。いかなることがあっても
自分のテーマを追求する。
 (精神障害者にとって)、
アートとは、心の中のカオスを
システム化する試みか?
(写真は篠原氏が関わる、詩人 吉増剛造氏の作品。写真フィルムを多重露光したもの)。

質疑応答
福祉的見地から、
「障害のある人の作品を埋もれさせない。発表の場が欲しい」。
「福祉にはノウハウがない(特に精神は)。
アートの立場から福祉に働き掛け連携して欲しい」。